韓国の人気インフルエンサーは、なぜソウルを離れ始めたのか。

これまでの韓国旅行といえば、ソウルの人気カフェや定番グルメを巡るのが定番だった。しかし最近、韓国で影響力を持つクリエイターたちのカメラは、少しずつ地方へ向き始めている。その背景には、韓国観光の考え方そのものの変化がある。

ソウルだけではない、新しい韓国の魅力

韓国旅行といえば、長らくソウルの人気カフェや話題のレストラン、最新スポットを巡るスタイルが定番。SNSでも「どこへ行くか」が注目され、写真映えする場所や流行のグルメが数多く発信されてきた。

一方で、ここ数年は少しずつ変化の兆し。韓国のクリエイターやインフルエンサーがカメラを向ける先は、有名店だけではない。地方の市場、昔ながらの食堂、漁村の朝市、伝統製法を守る工房など、その土地ならではの文化や暮らしへの関心の高まりつつある。「何を食べたか」ではなく、「誰が作り、どのような歴史の中で受け継がれてきたのか」。料理の背景や地域の物語まで含めて届ける発信スタイル。韓国の旅の楽しみ方にも、新たな価値観の広がりを見出しているようだ。

こうした流れは、個人の発信だけによるものではない。
韓国観光公社は2026年、世界13か国から33人のインフルエンサーを招き、江原道や全羅道、慶尚道などを巡るプロジェクトを実施。
総フォロワー数は約2,130万人。世界へ向けて地方の魅力を発信する取り組みが、今まさに行われている。

紹介されるのは、有名観光地だけではなく、地域の郷土料理、生産者との交流、伝統文化、自然景観など、その土地ならではの体験が中心で、観光地を巡る旅から、地域を知る旅へ。
韓国観光が目指す新たな方向性。その変化を伝える存在としてもインフルエンサーの力が試される。

いま注目されるのは、その土地だからこそ味わえる食文化

韓国の地方には、その地域でしか出会えない食文化がある。
例えば済州島を代表する郷土料理「カルチジョリム」は、新鮮な太刀魚を甘辛い特製ダレでじっくり煮込んだ一品。
全羅道では、豊かな発酵文化が息づく郷土料理。
港町・釜山では、地元の日常に根付くテジクッパなど、それぞれの土地を象徴する味が存在する。こうした料理は、人気ランキングだけでは語れない。気候や風土、歴史、人々の暮らしの積み重ねによって育まれてきた地域文化そのもの。

最近のインフルエンサーの投稿でも、料理だけではなく、店主との会話、市場の活気、食材が並ぶ風景までを丁寧に記録されている。その土地の空気までを味わえるようだ。

インフルエンサーが地方を選ぶ3つの理由


① 「まだ知られていない景色」がある
SNSでは、誰もが見たことのある場所よりも、新鮮な景色や新しい発見のあるコンテンツが支持されやすい。海沿いの小さな港町、美しい棚田、地域限定の祭りなど、地方にはソウルでは出会えない風景が数多く残されている。

② 地域ならではの食文化が人気
地方には、その土地でしか味わえない料理や市場文化がある。全州の韓定食、統営の海鮮、江陵のコーヒー文化など、食を目的に地方を訪れる旅行者も増えており、インフルエンサーにとっても魅力的なテーマとなっている。

③ 「暮らすように旅する」スタイルが広がっている
韓国でも近年は、観光名所を短時間で巡るより、その土地でゆっくり過ごす旅を楽しむ人が増えている。古民家をリノベーションした宿やローカルカフェ、地域住民との交流など、地方だからこそ味わえる時間そのものがコンテンツになっている。

韓国観光も「映える」から「体験する」時代へ

SNSの普及によって旅行先を選ぶ基準は大きく変化した。以前は「写真映え」が重要だったが、現在は実際に体験したことや、その場所でしか得られないストーリーが重視されるようになっている。

韓国のインフルエンサーたちも、単なる絶景紹介ではなく、地域文化や人との交流、伝統体験などを発信するケースが増えている。その影響を受け、旅行者も「自分も同じ体験をしてみたい」と考えるようになり、地方への関心が高まっている。

これから韓国旅行で選ばれるのは「どこへ行くか」ではなく「何を体験するか」

韓国旅行は今、大きな転換点を迎えている。これまでは「ソウルで人気のカフェ」「明洞でショッピング」「聖水で写真を撮る」といった“場所を巡る旅”が主流だった。しかし現在は、その土地ならではの文化や人との出会い、地域の暮らしを体験することに価値を感じる旅行者が増えている。

実際に韓国の人気インフルエンサーたちも、地方市場で地元の食文化を紹介したり、小さな町の宿に泊まったり、海辺や山間部でのアクティビティを発信する機会が目立つようになった。その影響もあり、フォロワーたちは「同じ写真を撮るため」ではなく、「自分だけの体験をするため」に旅先を選び始めている。

これは韓国観光の魅力がソウルから失われたという意味ではない。むしろソウルを入口として、その先に広がる地域の文化や自然、食、人との交流へと興味が広がっているという変化だ。

これからの韓国旅行で選ばれるのは、有名な観光地の数ではない。その土地でしか味わえない時間や体験が、旅の価値を決める時代になりつつある。次に韓国を訪れるなら、ぜひソウルの先にある新しい韓国にも目を向けてみてほしい。

編集・文:COCOA

写真提供:韓国観光公社(Korea Tourism Organization)


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