韓国 「食のプロ」にインタビュー ④ 焼き鳥専門店 「ひばり」オーナー ソク・テジュン氏  

韓国の飲食産業事情を覗いてみると、企業意欲、特に若者たちの独立志向が高い国だということがわかる。メディアの影響もあり、自分の腕で店を切り盛りする料理人たちが世間から評価を受けるようになったことも彼らの意欲を高める要因の一つだろう。ここ数年はお客の舌も肥えてきているためか、大きくチェーン展開する店よりも、自分の腕で勝負する専門店が人気を得る傾向があり、それぞれの味と嗜好をこらしたお店がたくさんできている。
今回のインタビューの主人公は焼き鳥専門店「ひばり」のオーナー、ソク・テジュン氏。彼も28才にして自分の店を構えた若きオーナーである。韓国の飲食産業事情を20代ならではの目線で語ってもらった。


焼き鳥専門店「ひばり」、市庁にお店を構えるまで


― まず、韓国でお店を開くに至った経緯を教えてください。

ソウル市の梨泰院にある焼き鳥屋さん「ごう」でアルバイトの時も含め、約5年間修業を積みました。そこで当時の僕の師匠である福島さんに、焼き鳥の仕込みや接客など、大切なことを多く学びました。多くのことを教わるうちに、「自分も福島さんのように美味しい焼き鳥をお客様に食べてもらいたい!数年後は自分も韓国で自分の店を構えたい」という気持ちが強くなり、オープンまでに至りました!

― お店を構える市庁エリアの商圏的な特徴について教えてください。
メリットは、やはりオフィス街なので平日のランチタイムが盛況だということです。ランチを食べに来たお客様に「ここは夜もやってるんだ!夜には本格的な居酒屋なんだ!夜も来てみたい!」と思ってもらえることで、夜の営業の宣伝にもつながっています。

デメリットとしては、オフィス街なので会社が休みの日は人が全くいないということです。ですので、週末(土、日)や祝日は商売にならないです。

― お店を市庁エリアに出された理由は何ですか?
色々物件を見て歩きながら、どこがいいかと凄く迷いました。梨泰院、新村、江南エリアはすでに居酒屋は沢山ありますが、市庁エリアには飲食店自体は多いものの居酒屋は少ないというイメージがありました。何より、本格的な焼き鳥屋がないということも市庁エリアを選んだ大きな理由の1つです。

― 飲食店がひしめくエリアで、他のお店との差別化を図る上での戦略は何ですか?
市庁エリアは確かにサラリーマン向けのリーズナブルなお店が多いですか、居酒屋は意外と少なく、あっても価格帯が高いところが多かったのが驚きでした。そこで、美味しい焼き鳥や料理を他の居酒屋より美味しく安く出せば絶対に勝てると思い、その戦略でやってきています。

焼き鳥 「ひばり」 人気の理由は…

― ランチメニューが美味しくてリーズナブルだと大人気だと聞きました。
一般的に和食スタイルの丼ぶり屋さんでは、丼ぶり1杯1万ウォンを超えるところも多々あり、高いイメージがあります。しかし、うちはオフィス街でランチと言うこともあるので、値段を7,500ウォンから9,000ウォンに抑えたことがまず良かったと思っています。さらに、材料は全てきちんと自分たちで仕込んでいますし、備長炭の炭を使って焼いていますので、お客様に美味しく感じてもらっているのだなと感じています。

― 夜は居酒屋メニューも提供していらっしゃいますが、反応はどうですか?
夜は本格的な居酒屋です。焼き鳥はもちろんのこと、一品料理の反応も悪くないですよ。ただ、1次会は一般的なご飯屋さんで済ませて2次会から来られるお客様が多いので、今後はメニュー開発などを通じて、1次会から来ていただけるようなお店にしていくのが目標です。

― 韓国人と日本人の味の好みの違いを感じることはありますか? ひばりさんが工夫されている点があれば教えてください。
味付けは日本人も韓国人も本当に人それぞれだと思うので、何とも言えないですね。でも、僕は本格的な日本の焼き鳥を提供したいと思っているので、韓国人のお客様にも、日本人のお客様にも、味付け(塩の量)は特に変えていないです。あえて言うなら、韓国のお客様にはしっかりと焼きを入れて、日本人のお客様には少しレアで出す時もあります。

― お店のスタッフさんが皆さんお若く、お店の雰囲気も若くて活力がありますね。スタッフさんとのコミュニケーションの中で、気にかけていることは?
まず、ホールスタッフは昼も夜も日本人のスタッフで成り立っています。来てくれるお客様に少しでも日本の雰囲気を感じてもらいたいと思っているので、日本で飲食経験のある日本人のスタッフを採用するようにしています。楽しく働いてもらうのが一番だと思ってるので、少しでも場が和むように皆に接することを心掛けています。

「ひばり」、これからの飛躍を誓う

― オープンから半年。お店を経営してみて大変なことは? 反対に、最も楽しいことは何ですか?
やはり人間関係が一番難しいですね。(笑)最も楽しいことは、単純なことですが、お客様に喜んでもらえることですね!飲食はお客様の反応がすぐわかるので、体力的には少し大変ですが、その本質をしっかり理解することができれば本当にやりがいのある仕事だと思っています。

― 不景気だと言われる韓国ですが、一方で、韓国の若い人は起業に対する意欲も高いように思います。このような現状をどのようにお考えですか?
凄く良い現象だとおもいます。僕自身そうでした。 修業当時も、いつかは自分の店を持ちたいという気持ちが自分自身を高める動機や目標に繋がりましたからね。しかし、どんな人と出会うのかということが本当に大事だと思います。自分の師匠であったり、尊敬できる人が周りにいることが、今後の自分を作る上で大事なことだと思います。

― ひばりのこれからの目標について教えてください。
まだ、オープンして半年ですが、美味しい焼き鳥や料理を作っていくこと、接客にもっと力を入れていくこと、当たり前の事を当たり前のようにしていくのが今後の目標です!

〇 ソク・テジュン プロフィール
石川県生まれ。小学校卒業後、韓国に移住。中、高をソウルで卒業後、日本の居酒屋などで2年経験を積んだ後、韓国の軍隊に入隊。
除隊後、梨泰院の焼き鳥店「ごう」で5年間修業の末、独立して焼き鳥専門店「ひばり」をオープンする。

焼き鳥専門店 ひばり
創業:2018年
焼き鳥専門居酒屋ひばりです。シチョンで美味しい焼き鳥と言ったらひばりだと思っています!
お近くに寄られた際は是非いらしてみてください。
店舗住所:ソウル市中区世宗大路11ギル30 4階
URL:https://www.instagram.com/yakitorihibari/

代表的なメニュー名と価格
焼き鳥丼ぶり 8,000ウォン (ランチ)
親子丼ぶり 7,000ウォン (ランチ)
焼き鳥盛り合わせ5種 15,000ウォン など

文 : 横尾美帆(よこお みほ)
和歌山県生まれ。早稲田大学在学中に韓国に交換留学生として高麗大学に通う。卒業後は韓流ビジネスに携わり、テレビ番組の制作や芸能プダクションとともに各種韓流イベントの企画を手掛ける。その後、日韓の様々なビジネスの橋渡しを経て、2019年に日韓コンサルティング会社 Louloumaoを設立。
FBとインスタグラムにて韓国のおいしいお店情報を発信中!

FB:https://www.facebook.com/umaimisekorea/
インスタ:https://www.instagram.com/meechannel/

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